一万円の使い道〜地獄の追加投資編〜
前回のあらすじ
前回のオチをツイッターにお漏らしされる。
–––舞台は天文館某所のパチンコ店に戻る。
PM12:30
腹ごしらえをし、この後の流れを考える。
財布の中には、雑費として用意した5000円。当初の予定では一万円が消えた時点でアニメイトへ移動し、漫画の新刊やら推しのCDや写真集を買う予定だった。
だがしかし、そこに同行者である舞が余計な一言を吹き込むのであった。
舞「追加投資して溶かした分捲ればいいんですよ」
ううう〜〜〜〜ん
財布の中には5000円。ちなみにATMもすぐそこにある。
ここから許容できる追加額はせいぜい4、5千円。ここで捲ればどうとでもなるし、負けても諦めがつく額。
そして時間もまだ正午過ぎ。彩々へ向かうにしてもまだ開店時間ではない中途半端な時間……
なぜ、せんどうはキャッシュカードを家に置いて来なかったのか。この選択が、彼を地獄の底へと叩き落としたのである……。
PM12:45
ATMで4000円下ろし、再度パチンコ店へ。
今度は店を変えることに。
舞の話によると、鹿児島にあるパチンコ店の中で1番大きいとかなんとか。(よく覚えてない)
写真を撮っている際も「下の看板も写してどこに来たかも分かるようにしなきゃ」といちいち注文が多い。何も分からない人からしたらこんなもんただの背景の一部でしかないのに(失礼)
てな訳で入店。なんか入り口がいい香り。
リラックスしたのもつかの間……。
人!!!
人!!!!!!
1パチも4パチも人だらけ!
お前ら平日のまっ昼間から何やってるんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
タバコの臭いと人のむさ苦しさとで吐き気はますます増大していく。
頭も回らない中、舞から選んでもらったのが「スーパー海物語」
さっき打った海物語と違うのが、アイマリンプロジェクト版であるということ。
これ
パチ屋へ行く前に舞から「キモヲタ向け海物語(クソ失礼)(恥を知れ)」と教えられたこの台。
たしかに打ってみると魚だけではなく、デフォルメされた女の子が三線を弾いている演出も流れてきて退屈はしない。
舞「その女の子が5人並んだら50%で当たりますよ」
せんどう「へぇ〜。」
もはやアドバイスも良く分かっていない。女の子可愛いなぁ。
沖縄の海を流れる魚と女の子を眺めるだけの機械と化していたその時、奇跡が……。
せんどう「あれ?5人来てないか?」
舞「マジで?!」
せんどう「あ、なんか増えた」
舞「ウッソ!?!?そんなことある?!?!」
台「うーっマンボ!」
舞「ヤベェ!ほぼ大当たりだ!!!!」
せんどう「マジで!?ヤッタぁあああ!」
とうとうこの時が来た。
時間にして約3時間43分。額にして14000円。
破れかぶれで座ったこの台。パチンコ歴7年(?)の彼すらも初めて見る演出に驚愕している。
となると、今までの絶望と苦労も確実に報われる。ありがとうスーパー海物語。ありがとうSANYO。
ぼくは、期待と希望を胸に、赤く点滅するボタンを押した。
台「…………」
ぼく「…………」
舞「…………」
メスガキ「チャンスに負けて♡大人のプライドとかないの♡」
エース「ハァ…ハァ…敗北者?」
死を司る冥邪神デスガキ「पहली चूत करने के लिए लंड………」(全体即死攻撃を唱える
ダイソーの店員「そこに無ければ無いですね。」
ぼく「無いの?」
舞「何も無いですね……」
え?「ぼく」
舞「ていうか、ここまでの演出外す人、初めて見た……」
くたばれタカラ○ミー
残りの額が溶けたところで退店。
ここら辺の記憶はよく覚えていないが、気がついたら追加で4000円ほど下ろして、最初にガルパンとか打ってた店に戻っていったのはなんとなく覚えてる。
舞「当たってるところ見たいなら、この1/77で当たりの出る咲打ったらどうです?」
もうこの時点で自分の頭の中は「ダメージを少しでも抑える」から「当てる」ことに変わってしまっていた。
しかももう追加でお金を下ろしている以上後に引けない。
大人しく咲に座った瞬間、舞から一言。
「僕がいない方が当たるんじゃないですか?」
思えばシンフォギアの時もガルパンの時も、さっき99%当たりのうちの1%を引いて爆死した海物語の時も、近くに舞がいた。
僕が爆発していく中、彼はジャラジャラと大当たりを出している。彼はこの時点で6000円勝っており「てめえその玉寄越せよ」と遅いかかりそうな疼く右手を僕は抑えていた。
「その右手は人を殴る手じゃなくて、パチンコを回すための右手ですよ」
舞はそう言わなかった。
僕も舞を殴らなかった。
僕は1/77の咲に座り、舞はどっかへ行った。ついに独り立ちである。
今のせんどうなら右打ちも左打ちも分かる。一円玉で固定しなくても回せる。この時の自分はなぜか冷静さを保っていた。なんか後ろで舞が「ヤベェ一万円落とした!」とかなんとか騒いでいたが特に気にはならなかった。
そんな時だった。
台が突然眩しくなる。
台「左打ちにしてください!」
ぼく「は?」
左打ちにする。
突然下からドザーっと玉が落ちてくる。
舞「うそぉおお!」
※撮影:舞
一万円を捜索していた舞が驚愕する。
夢にまで見ていた大当たりの瞬間だった。
まさか千円入れてすぐに本日初めての大当たりを引くなんて思っても見なかった。今日一の喜びである。
しかし、問題はここからだった。
当たったはいいがこの下にドザーっと落ちてきた玉をどうすればいいか分からない。舞は一万円を見つけてまたどこかに行ってしまった。
そうこうしていくうちにもゲームは進んでいく。なんかまたチャンス演出が出てくる。
なんかこれヤバそうじゃね?
とりあえず下に溜まっていく玉を投入していく。
溜まった玉も無くなり千円を投入。
また当たる。
当てた玉を投入
無くなり千円を投入
また当たる
以下繰り返し気づいたら財布の中には二千円と小銭しか残っていない。
や ら か し た
当たりが気持ちよく次に次にと打っていくうちに、気づけばスカンピン。
このゲームの真の卍闇卍に気づいた瞬間であった。
予算もやる気もすでに尽き、Zガンダムを打っている舞を置いて先に退店。
PM14:37
予算10,000円+追加投資5,000円+4,000円+消えた雑費2,000円
計21,000円投資
結果:マイナス21,000円の爆死
彩々へ向かう電車の中で、様々な後悔が頭を巡った。
2万円もあれば、デュエマの環境デッキの1つは組めるし、ヴァイスならデッキをもっと組める。
あれだけ言ってたモルネクのガイバーンもガイオウバーンにすることもできる。
買う予定の推しのCDだって自分用、保存用、布教用の3つ揃えられた。
美味しいお寿司なら4回くらいはいける。ラーメンなら20杯は食べられられる。
風俗に行けば90分コースで指名料ホテル代を払ってもまだおつりが来る。
新しい秋物の服も揃えられる。
両親と弟にこれまでの感謝を込めてプレゼントを買うことだってできた。
一体どうしてこんなことに……。
眠気と吐き気はますます大きくなっていく。
彩々に到着。お店に手描きルリグ大会で使う0ルリグを預け、ぶらっきーとヴァイスのフリーを2戦ほど。
めちゃくちゃ気持ちよくブン回り、これまでのヴァイスの戦績はなんだったのかというほど爽快に勝ちがつく。ほんとなんなんだ。
やりながらポツリと呟く
「ヴァイスはいいなぁ。だって命(生活)がかかってない。楽しい」
一同「は?」
カードゲームは資産が手元に残る。箱を剥いて爆死しようが剥いたカードが手元に残り、それで遊ぶもよし、売却して資産にするも良し。金を払ってもある程度のリターンはつく。
そして何より、負けても何もない。負けて死ぬのはせいぜいコロコロのホビー漫画くらいである。
これまで負け続けて一喜一憂していたのがバカみたいである。だってカードゲームは負けてもどうにもならない。
パチンコはどうだろうか。時間と共に溶けゆく資産を眺めるだけ。勝つか負けるかはその時の確立と運。自分は何も出来ずただぼーっと見ているだけ。驚くほどに精神と身体に良くない。財布にはもっと良くない。
こんな危険な遊戯を生業にしている人は一体どんな心を持っているのだろう?
少なくとも僕みたいな小心者にはこのようなデスゲーム、とてもじゃないがもう続けることができない。
あの時うまい棒の買い占めに走っていたら……。ラクロジのカードを買っていたら……。
その日の夜は、後悔とカフェインの過剰摂取により、長い夜になった。
巡り巡る後悔。長引く吐き気と両手の痺れが全身を蝕み、眠りの海に沈むことが出来ずにいた……。
こんなことなら、風俗に行けば良かった。
そんなことを考えながら、AM0:30、眠りに落ちた。
明日は5時起き。こんなことするんじゃなかった。
「一万円の使い道」
〜完〜
もう二度としない。